暁の銃声
大晦日を祝う高脚踊のにぎわいもひとしきりやんで、山々には八路軍の警備するかがり火が、
狐火の様に明滅している。ここは通化市竜泉街の、高台に並んだ日本人町には、夜警の拍子木の 音がとぎれとぎれに響き、やがて夜は次第にふけていった。
終戦後初めての旧暦年越し祝いに一杯のパイチュウ(支那焼酎)をのみ、すべての憂さを忘れて四畳半の部屋に寝ていた私は、「田口さん、ちょっと起きてください」
時ならぬ女の声にふと呼び起された。と同時に、柱時計の鈍い音が二時を打った。
呼び声の主は、玄関の間に住む山口泰三さんの妻、君江さんである。
戦後、地方から着のみ着のままで
Subscribe to:
Post Comments (Atom)
No comments:
Post a Comment